(1)ピラティスの本質
ピラティスは、「正しい運動で体を矯正すると、体が正しく機能するようになり、身体的健康へとつながっていく」という考え方が土台となっています。
ピラティスを行うと、小さな筋肉が発達し、それが大きな筋肉の強化に役立ちます。そして、全ての筋肉ができるだけ均一に発達させることにより、個々の筋肉が調和し、本来の動きを取り戻していきます。また、骨や筋肉の状態はどうか、関節の動き方はどうか、呼吸の状態はどうかなど、一つ一つ体に問いかけながら行っていくことで「自分自身の体と対話する」ことを重要視します。そして、自分の身体に何が起きているのかを感じ取りながら行うことが大切なのです。
ピラティスを続けることで、体幹を鍛え、姿勢がよくなり、そして無意識に正しい体の使い方ができるようになるため、健康へとつながっていくと考えられているのです。
(2)ピラティスは、1900年代初頭にドイツ人のジョセフ・H・ピラティス氏によって考案されたエクササイズです。
ピラティス氏は幼少期、くる病や喘息、リウマチ熱などに苦しんだため、病を克服するためにトレーニングすることに目を向けました。ボクシングやレスリング、器械体操など、パワーと筋肉を重視する西洋的な鍛え方ではなく、ヨガや禅など、心身を鍛える東洋の伝統的な方法も学び、多くの知識を体得しました。そして、この経験の後に、「正しい運動で体を矯正すると、体が正しく機能するようになり、身体的健康へとつながっていく」と考えるピラティス・メソッドを確立したのです。
第1次世界大戦中、ピラティス氏は戦争によって捕虜として拘留される中、看護師として負傷した兵士を介護するようになり、負傷兵を復帰させるリハビリテーションのための器具を考案したり、身体的エクササイズを教授し、治療に役立てました。
これをきっかけとして、彼は新しく考案したエクササイズに自分の名前を付け、「ピラティス」が誕生しました。
その後、ピラティスを広めるべく、ニューヨークに最初のピラティス・スタジオを開き、1930~1940年代にかけて、その効果がバレエダンサーやパフォーマー、スポーツ選手たちを中心として世の人々へと伝わっていきました。
1967年にピラティス氏が亡くなった後も、ピラティス哲学は伝わり続け、ピラティスはさらに進化して、世界中で普及されています。
現代では、体幹やコア(体幹部分のインナーマッスル)の安定性を図るエクササイズを対象とした研究が進んでおり、ピラティスの理論と実践は医療としてのリハビリテーションを目的とするだけでなく、フィットネスとして健康増進を目的としたり、プロスポーツ選手向けのトレーニング方法になったりと、幅広くさまざまな用途で世界中の人々に浸透しています。
日本成人病予防協会 総務省認証 学術刊行物より