マラソンによる筋肉の変化

 マラソン選手などは、持久トレーニングをすることで、筋肉における毛細血管数の増加、ミトコンドリアの増加・機能向上、ミオグロビンの増加などがおこるため、筋肉の血液量が増加し、酸素の摂取量が向上します。

●毛細血管の発達

マラソンにより、筋肉では毛細血管が発達します。持久的なトレーニングを行うと、筋細胞では酸素や栄養素などの必要量が高まり、より多くの血液供給を必要としています。このような状態に置かれると、筋肉では、毛細血管網が発達するため、血管新生が起こります。これにより、筋細胞が効率よく酸素を取り込むことができます。

●ミトコンドリアの増加と機能向上

マラソンなどの有酸素運動を行うと、筋細胞内のミトコンドリアが増加し機能の向上が起こります。ミトコンドリアは、細胞の中にある小さな器官で、酸素を用いて運動に必要なエネルギー源となる糖質や脂質などの栄養素を分解し、臓器や筋肉などが働くためのエネルギー源であるATPという物質を産生します。

では、ミトコンドリアはどのように増えるのでしょうか。私たちが筋肉を使うとき、筋細胞ではたくさんのATPが消費されます。次々に消費されると、筋細胞はエネルギー源の足りない飢餓状態に陥ります。すると、エネルギー源がないという非常事態を受けてミトコンドリアが増えていくのです。

筋細胞内のミトコンドリアが増えれば、より多くのATPがつくられ、ATPを使って動く筋細胞は長時間疲れずに動き続けることができるようになります。また、一流のマラソンランナーでは、ATP分子をつくる反応の鍵を握るATP合成酵素の働きが、一般の人の3倍高いことも報告されています。

しかし、有酸素運動によって増加したミトコンドリアは、運動を定期的に行わないと元に戻ってしまいます。

●ミオグロビンの増加

ミオグロビンは、筋肉組織中に存在するヘモグロビンに似た鉄を含むタンパク質です。ミオグロビンは、ヘモグロビンによって運ばれてきた酸素を筋肉中に貯蔵する役割を果たしているため、ミオグロビンの増加により酸素の供給能力が向上します。

 

 

※ランニング、ジョギングを含め「走ること」を総称して「マラソン」という表現を使っています。

日本成人病予防協会 総務省認証 学術刊行物より